ボランティアで 最終章

中学校を卒業してして数年ぶりに悪ガキ4人が集まる機会があった。自転車パンク事件の真実はこの時に知った。

 まず、デカブツから聞いた話を実行したあの日のことが周囲にどういう影響を与えたかというと、1人は彼女をゲット。他の3人は作戦中止になり、しかしその後、各クラスで作戦の裏側を語る。それを聴いた他の生徒はさらに周囲にばら撒いた。今の言葉で言うと「拡散」したのであった。女子と付き合う為に男子はこんな作戦を立てているらしい。。当然女子にもこんなふうに伝わり、女子の間ではいつしか「自転車がパンクするということは男子に告白されるサイン」という噂が立ち込めたのである。

 噂がたっているという事を知らない男子はノコノコと意中の人の自転車の前に現れ、タイヤにプスッと穴を空ける。そして部活が終わるのをひたすら待つ。

あの日はこれが同時多発的に行われたのである・・・・・・・。

噂を知っている女子は一体何が起こったのかわからないだろうし。噂を知っている女子もおそらく複雑な心境であったであろう。パンクした事自体は良くても「誰が」パンクさせたのかが重要であったであろうし。

そんな中、A子は立ち上がったのである。周りの女子たちが困っている。同時多発的に自転車がパンクしており、明らかに人為的な状況証拠が揃っている。A子は職員室へ向かった。

A子の自転車のタイヤは無傷であったそうな。。。。。。

A子は知っていたのであろうか噂を。もししらなかったとすれば、職員室へ向かったのは純粋な正義の心である。しかしもし、もし、知っていたとすればどんな気持ちだったであろう。周囲の女子たちには「サイン」があり、自身にはそれが見当たらなかったのである。

繰り返しになるがこれは昔々のお話。世間はクリスマスがやっと定着してバレンタインでは「義理チョコ」という言葉が生まれた年である。

悪ガキ4人はことの真相を聞いて、「義理チョコじゃないけどボランティアでA子の自転車にも穴あけときゃよかったのか?」と言ったとさ。

ボランティアで・・。第5章

 4人は文字通り固まった。。何がどうなって今ここにいるのかわからなかった。女子の?自転車の?殆どがパンク? なんだそれは・?

 土曜日の夕方、部活終わりの生徒達が自転車で帰ろうとすると、自転車のタイヤがパンクしているという事件が同時多発的に起こったらしい。

それも何故か女子生徒のみ。被害にあった女子生徒は仕方なく自転車を押して帰ったという。

校長室でこの事件を聞いた私達は、ある意味「納得」した。身に覚えがあったからだ。ただし自転車に穴を空けてパンクさせたのは自分達ではないし、おそらく犯人は男子生徒の誰かで、被害者のことが気になっている人物であると教師達に説明した。

自転車パンク作戦を実行して見事カノジョをゲットしたヤツ以外の3人は各々のクラスの友人に単なる話のネタとして事の全貌を話す。それを聞いた友人はまた他の誰かに話し・・次第に誰から聞いたネタなのかかわからなくなり、やがて実行に移ったのである。いつぞやの私たちのように。。。。。

真相を知った教師達は、悪ガキ4人に今の時代では考えられないほどの天誅を喰らわし4人を解放した。

私には不思議に思っていることがあった。女子たちの反応である。自転車パンク事件の被害にあった女子は誰ひとりとして悪ガキ4人を責めなかったのである。パンクの修理代を払わされる事になると内心ヒヤヒヤする毎日を過ごしていたが、請求してくる女子はいなかった。

普通ならパンク事件を起こした張本人4人を吊し上げて修理に掛かった費用を取り戻したいはず。精々1000円くらいであっただろうが中学生の月のお小遣いから1000円はイタイはず。だのになぜ?。

そんな疑問も忘れかけていたある日、別件で教師に呼ばれた私は例によっていつもの説教を食らったあと教師に訊いてみた。自転車パンク事件の被害者が誰1人として名乗り出てこなかったこと。あんな事件を起こしたにも関わらず修理代も請求されていないこと。まるで何事もなかった事のように事件が風化していること。なぜかわからないと。

教師の回答は「何故かはわからない」だった。何故かはわからないがその教師にパンク事件を伝えたのは「A子」という女子生徒であるということだった。土曜日の夕方にA子はとつぜん職員室に現れ教師達に事件を報告したのだという。

A子は勇敢で、身体も大きくて、相手が男子でも平気で立ち向かっていくような「強い女子」という印象の生徒。

謎は深まるばかりだった。

 

ボランティアで・・。第4章

翌週、月曜日に謎は解けた。

私がデカブツから聞いた手口をそのまま実行したように、他の3人も同じ事をしていたのである。事もあろうに3人のうち1人は作戦が見事に成功し、気持ち悪い照れ顔で私達に新しい彼女を紹介してきた。

つまり、悪ガキ4人が同じ作戦を実行し、そのうち1人だけが成功したのである。私が見た眉間に皺を寄せた女子達は恐らく作戦失敗の被害者だろう。

こうして、この出来事は悪ガキ4人にとって作戦成功者の1人を除いては単なる笑い話になった。昼休みに教室の中で喋る戯言の一つになってしまった。

ひと月くらい経ったある日の月曜日、悪ガキ4人はとつぜん校長室に呼び出されることになる。原因は全くわからない。しかし校内放送で名指しで4名の名前が告げられ。今すぐ校長室へ来なさいとアナウンスされた。

繰り返すが、原因は全くわからない。わからないからこそ、毅然とした態度で校長室へ向かう。勢いよくノックした部屋の中には生徒指導の教師が数名、腕を組んで私たちを睨みつけてきた。

こちらとしては、謂れのない非難は受けたくない。何かございますか?と言わんばかりの、これ以上ないくらい太々しい態度で臨む。

教師:「お前らか?」

私:「はぁ? 何が?」

教師:「土曜日の夕方に女子の自転車の殆どがパンクしてた事件の犯人はお前らかーーーーー?!!!!」

悪ガキ4人:「はい?」「はい?」「はい?」「はい?」

今回はここまで。

ボランティアで・・。第3章

この話は今から今から30年以上前の話。時代は昭和から平成に移り変わって数年、世間はいわゆるバブル時代。KENWOOD、VictorのCDコンポが大流行りして、中学生にとってCDコンポが大型であるほどステータスが高いとされる時代。今、日本でハロウィンが定例行事になったようなグラデーションでクリスマスが定着した時代。バレンタインではチョコレートを意中の人だけに渡す時代から「本命チョコ」と「義理チョコ」という言葉が出現して、世の中のモテない男子に救済制度として定着した時代。

それでは本編をどうぞ。

 デカブツから「手口」を聞いた悪ガキ4人はこう思ったそうな。。「この方法は使える・・」しかし、その場で「俺もやる!」と公言した者はいなかった。4人それぞれが、いつそれを実行するかを胸の内に秘めて帰宅したのであった・・・。

 筆者もその1人である。

 私がデカブツの受け売りの計画を実行に移したのはそれから1週間経ったあと、翌週の土曜日であった。クラスの気になる女子の自転車はすでに覚えていたし、学校の規則で自転車には学年と名前の書いたシールを貼ることが義務付けられていため特定に時間はかからない。自分の自転車を探すふりをして、「対象の人」の自転車に近づき針を使って穴をあけるのは普段から隠れて悪さしてる自分にとっては造作もない事だった。あとは部活が終わる時間まで自宅待機。終わった頃を見計らって学校に行く。手にはパンク補修キット、天気は晴れていたが空気穴を見つけるための水たまりは適当に探せばいいだろう。学校の中に転がってる掃除用のバケツでも使えばなんとかなると思っていた。あわよくば、パンクを発見して見事補修完了、近所の自転車屋さんまで一緒に歩いて行く道中に告白、タイヤが治ったら「彼女」を後ろに乗っけて家まで送る。愚かな中学生の極めて都合の良い妄想を膨らませながら時間が過ぎるのを待った。

しかし、事態は思っていたより意外な方向へ進んでいった。

 夕方、私が学校へ着いた頃、体育館裏の駐輪場では人だかりが出来ていた。数人ずつの所謂「女子グループ」がいくつか間隔をあけて、できており、眉間に皺を寄せながら話していた。遠目にその光景を見て、私は何か嫌な予感がしたので、急遽作戦変更、いや作戦中止。

今回はここまで。

ボランティアで・・。第2章

 デカブツから聞いた「真実」はむしろ「手口」という言い方の方が相応しいものであった。

我々の中学校は一部の地域を除いて徒歩通学であった。一部の地域というのは徒歩で片道1時間以上かかる距離にある地域のことで、そこに住んでいる生徒は特別に自転車通学が認められていたがそんな生徒は全校生徒のうち10%もいなかった。従って全校生徒のほぼ全員が徒歩通学であった。但し土曜日の部活動においては別である。

土曜日の午後、部活動がある生徒達は昼食について二つの選択肢がある。ひとつは学校にお弁当を持参する。部室ないしは教室でお弁当を食べて部活に行く。もうひとつは一旦帰宅するというものだ。昼食を取るため一度帰宅して、そのあと自転車で再び登校する。

「憧れの君」はテニス部であった。その日も練習のために一度帰宅して、自転車で体育館へ来ていた。

デカブツはこの自転車に目を付けた。

あの日、悪ガキ4人が商店街で「憧れの君」とデカブツの2ショットを目撃した日の午後、デカブツは駐輪場にいた。その手にはおそらく千枚通しのような細長い鋭利な針状のモノが握られていただろう。目的はただ一つ「憧れの君」の自転車である。

まず、「憧れの君」の自転車のタイヤに千枚通しを刺してパンクさせる。

「憧れの君」はさぞかし戸惑ったであろう。いつものようにテニス部の練習を終えて、さぁ自転車で帰ろうと思っていたら、自分の自転車がパンクしていることに気づくのだから。同級生たちは次々と帰っていく。。。しょうがない押して帰るか・・・。

といったところにデカブツ登場!

デカブツは白々しく声をかける。どうした?と。

「憧れの君」は一つ年上の先輩から突然声を掛けられ、戸惑いながらも状況を説明したそうな、タイヤがパンクしてしまったと。

そこにこれまた白々しくデカブツが取り出したのは、「自転車パンク修理キット」。

 デカブツは彼女の自転車を担いで近くの手洗い場に持っていく。そして目の前で自転車のタイヤからチューブを引き出し、手洗い場にあるバケツに一部分ずつ浸す。チューブに残ったわずかな空気が水泡となってパンクした部分を示す。先ほど白々しく取り出された補修キットを使い、穴の開いた部分にゴムのシールを貼り付ける。

デカブツは悪ガキ4人にドヤ顔で説いた。

この一連を目の前で見せることがポイントだと。

 かくして、「憧れの君」の目の前でタイヤのパンク補修劇場を披露したデカブツは近くの自転車屋で空気を入れてもらうように彼女を促しそれに付いていったのであった。

商店街の中を「憧れの君」の押す自転車を挟んで隣を歩く「画」の完成である。

今回はここまで。

ボランティアで・・。第1章

今日は一粒万倍日という日らしくとても縁起がいい日らしいので投稿話の一発目第一章を投下します。

 中学生時代、悪ガキ四人で部屋で遊んでいた。その部屋は商店街の真ん中にある家の2階で、窓を開けると商店街が見渡せる位置に面していた.

 そこで4人は、ある光景を目にした.それはそこにいた4人全員が驚愕する事実だった.

 商店街を中学生の男女が肩を並べて歩いている.男子生徒が自転車を押していて、その隣を髪の長い女子生徒・・・その女子生徒は1つ上の先輩で、悪ガキ4人に取っては謂わゆる「憧れの先輩」のだった.但し、問題はそこではない.自転車を押している男子生徒.コイツが問題だ.その男は同じく一つ上の学年の柔道部の男子生徒だった.主将でもないし、目を見張るほどの成績をおさめているというウワサも聞いたことものない. 悪ガキ4人にとっては単なるデカブツ..。

そのデカブツと「憧れの君」がなぜ・・・・.

真相を確かめるべく、悪ガキ4人は行動を開始した.

 まずはデカブツとの事実確認。デカブツを1人で呼び出す事に成功.その方法は単純である.クラスの女子に頼んでメモを書いてもらう.女子の筆跡で「お話がしたいので〇〇に来てください」と書かれたメモを見たら、イタズラと解っていても1%の期待を胸にノコノコとやってくるものである.今の時代では全く通用しない方法だが.

 案の定・・デカブツは現れた.呼び出した相手が悪ガキ4人だと知った時の絶望と「やっぱりな」という感情が入り混じったなんとも言えない表情とその後の落胆の様子を詳細にお伝えしたいが、今回は泣く泣く割愛する.

 4対1の状況で悪ガキ4人に有利とはいえ、相手は柔道の心得がある.学年も1つ上ということもあり下手をすれば4対1とはいえ形成逆転は大いに有り得る.まず4人で同時多発攻撃・・デカブツを羽交締めして、「あの日」の光景の真相を問いただす.なぜ、誰もが認める美人の「憧れの君」と貴様のようなむさ苦しいデカブツが.対して有名でもない、柔道が強いわけでもない、頭が良いわけでもない、貴様のようなデカブツが.なぜ商店街の真ん中を肩を並べて歩いているのだと.

 観念したデカブツは告白を始めた. 学年が一つ下の後輩が4人もガン首揃えて自身を羽交締めしたかと思えば、そんな事が聞きたかったのか?と言わんばかりの笑みを浮かべながら、真実を語りはじめた.。。

長くなったので今回はここまで..。デカブツが「憧れの君」と一緒に商店街を歩いていた理由と、それを知った悪ガキ4人が起こした学校中を巻き込む一連の騒動のお噺は次回へと続きます.

ではまた.

今年は五黄の寅らしい

今年は五黄の寅という珍しい年らしく、「何か新しい事」始めるのに良い年だそうな。

笑える話が好きなので、忘れないうちにここに残しておこうと思う。

これから不定期ではあるけれど、話のネタになる事を投稿していこうと思う。

忘れないうちにタイトルだけでも残しておこう。

「ボランティアとはl

「名殺し文句が出た話」

「野良スティッチがいた話」

「コンサートチケットの話 いろはにほへと」

「ものすごくタイミングがあった話」 あったかハイム

「武道家の論争」

「気付かれなかった事にホッとした話」フリスクのCM

「竹の貯金箱の話」

 「靴を1足しか持っていない人の話」

とりあえず思い出せるのはこれくらい。これから投稿していくつもり。ではまた